今回は『はるかブレーメン』を紹介します。
人が亡くなる前に見るといわれている走馬灯。
どんな走馬灯を見て自分の人生は終えるのか。
この1冊を読み、今まで心に残っている思い出を巡らせています。
人生の思い出や記憶を書き換えることができる「走馬灯の絵師」たち 。
彼らが経営するブレーメンツアーズは、依頼人の願いを受け、思い出を書き換えること、さらに、記憶の断片から思い出の素材を見つけ、素敵な思い出として仕上げていく。
いい思い出や大切な思い出でも、その思い出に色がついていないと、走馬灯には出てこない。
だから家族が絵師に依頼をする。
より良い思い出を見て人生を終わらせてあげたい、と考える家族の思い。
走馬灯を見る能力がある二人の高校生、遥香とその友人のナンユウはブレーメンツアーズの仕事を手伝います。
この体験をとおして、二人の高校生が成長し、さらに自分たちの進む道を模索し、見い出していく過程にも感心します。
育ての祖母が亡くなり、天涯孤独人になった遥香。実は彼女には3歳の時に自分を捨てた母がいます。遥香は母と再会を果たすのか。自分の能力を使って、母の走馬灯を見るのか。
この作品を手に取って遥香の決断をお読みください。
奇想天外な話のように思えますが、この作品を読んでいろいろと考えました。
人生の折り返し地点にきた者として、これからの年月、日々の生活を大切にして、悔いのない、素敵な思い出をできるだけ経験して記憶に残したいと。
そして同時に、『はるかブレーメン』を読んで以来、若年認知症になった友人をよく思い出しています。
彼女の思い出や記憶の中に私は色付きの状態で存在しているのかな、と。
中学受験の生徒さんを教えていた時、よく出題される重松清さんの作品を読んでいました。久しぶりに重松清さんの作品を手に取りました。
後半ではいつの間にか涙が。。その切ない涙のあとに温かい気持ちでいっぱいになりました。
419ページのボリュームですが、重松ワールドに引き込まれます。
『はるかブレーメン』 重松清さん 幻冬舎 1,800円+税 文責 Poroma