中高生のみなさん、そして親御さんに『夏の体温』をおすすめします

読書:お薦めの本

3つの話から成り立っています。どの作品も友人関係(話の順に、小学校、大学生、中学生)を軸とした話です。

思春期のとき、学校生活、友人関係、いろいろと微妙で複雑な気持ちになる時、この本があったら良かっただろう、と感じました。
私はこの5年くらいは若手作家さんの作品を多く読み、青春時代を回顧しています。文学作品は昔たくさん読みました。でも、もっと身近な学校生活が舞台になっている話だったら、もっと早く解決することもあったでしょうし、気持ちもすっきりしたことでしょう。

若手の作家さんたちは、私より年下の方たちですので、、。時代違いで残念です。

クラスでの息苦しさ、友人との付き合いに少し面倒くささを感じている中高生はこの本を読んでほしいです。ちょっとした息抜きのヒントがあるかもしれません。

「夏の体温」

主人公の瑛介は小学3年生。薬での治療と経過観察のために入院している。入院生活5週間目の瑛介は、検査が終わると退院していく子供を見送る立場だ。

そこに、同学年の壮太が2泊3日の予定で検査入院する。学校での楽しかった「休み時間」や「放課後の時間」を再現できる貴重な時間。二人はいろいろな遊びを満喫する。

小学3年生が冷静に物事を考え、そしてこんなにも繊細に感じていることに驚く。入院生活をしていると、なんでも欲しいものを買ってくれる親、「わがままが成り立たない」ことに寂しさを感じる瑛介。
「許されることが増えることは、本当は悲しいことなのかもしれない」(p. 21)という言葉に胸をつかれる。

先に退院した壮太が送ってくれた「干からびたバッタ」。瑛太が体感したいと願っていた夏の暑さを何よりも物語っている贈り物だ。

「魅惑の極悪人ファイル」

中学と高校では(友)人づきあいがうまくいかず、空想の世界に逃避していた主人公。大学では授業によって各人が動くので、クラス単位で行動する高校までの息苦しさを感じることはなくなった。

高校時代に書いた小説が文学賞をとり、声をかけてくれる人も増えてきた。
心が少し軽くなってきた生活の中で、新しい小説の登場人物のモデルを探している。

取材対象のストブラ(ストマック・ブラック=腹黒)と関わっていく中で、新しい自分に気づく。空想の世界ではなく、現実の世界では味わったことがない日常の出来事に新鮮さを感じる日々。

「花曇りの向こう」

中学になって友だちができるかな、新しい生活が少し不安だな、と思っている時に読んでみてください。読んでいる間、そして読後も「みんな同じような気持ちなんだ」と安心できます。

検定教科書、『国語1』光村図書に掲載されています。

『夏の体温』 瀬尾まいこさん 双葉社 1,400円+税

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